山口県立美術館 YAMAGUCHI PREFECTURE ART MUSEUM

ちょうよう 朝陽

香月 泰男 かづき やすお

1965(昭和40年)

油彩/カンヴァス

〈画家のことば〉
兵隊たちは未明にたたき起されて、耐寒訓練にかり出された。素足のマラソンは初冬の日課であった。ハイラルの夏は短く、秋もたちまち過ぎて、霜が大地を覆いはじめる。私たちは裸足の足裏にくだける霜の音を聞いて走った。やがて足の感覚もなくなるころ、ふと顔をあげると、東天の闇をついて太陽がのぼる。それは一瞬疲労も寒さも忘れさせる美しいものであった。
私は家族へよくたよりを書いた。はがきの半分には必ず絵を描いた。乏しい水彩絵具を使って絵の描ける僅かのチャンスだったので、どれほど心の慰めになっただろうか。のちに、絵はがきに描きとめておいたモチーフのいくつかがシベリヤ・シリーズの画題になった。この太陽もその一つである。

『シベリヤ画集』(新潮社、1971年)

香月泰男【かづき やすお】
生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)
山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学び、美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表しました。1967年、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。その作品は今日も多くの人々を惹きつけています。

寸法 91.0×60.6cm
形状 額装