山口県立美術館 YAMAGUCHI PREFECTURE ART MUSEUM

ちん

香月 泰男 かづき やすお

1970(昭和45年)

油彩/カンヴァス

〈画家のことば〉
人間が人間に命令服従を強請して、死に追いやることが許されるだろうか。民族のため、国家のため、朕のため、などと美名をでっちあげて・・・・・・。
朕という名のもとに、尊い生命に軽重をつけ、兵隊たちの生死を羽毛の如く軽く扱った軍人勅諭なるものへの私憤を、描かずにはいられなかった。敗戦の年の紀元節の営庭は零下30度余り、小さな雪が結晶のまま、静かに目の前を光りながら落ちてゆく。兵隊たちは凍傷をおそれて、足踏みをしながら、古風で、もったいぶった言葉の羅列の終るのを待った。
我国ノ軍隊ハ世々、天皇ノ統率シ給フ所ニソアル・・・・・・朕ハ大元帥ナルソ、サレハ朕ハ・・・・・・朕ヲ・・・・・・朕・・・・・・
朕の名のため、数多くの人間が命を失った。

『シベリヤ画集』(新潮社、1971年)

香月泰男【かづき やすお】
生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)
山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学び、美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表しました。1967年、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。その作品は今日も多くの人々を惹きつけています。

寸法 162.1×116.1cm
形状 額装