山口県立美術館 YAMAGUCHI PREFECTURE ART MUSEUM

ひなんみん 避難民

香月 泰男 かづき やすお

1960(昭和35年)

油彩/カンヴァス

〈画家のことば〉
敗戦を知った私たちの貨車は、同胞の避難民を満載した貨車と何度も出会った。鰯(いわし)のかんづめのようにぎっしり詰めこまれ、八月の太陽をさけるため覆われたシートをもちあげて、外をのぞく顔、顔。蒸し風呂のような中のどの顔も、不安と恐怖と疲労で、刑場に運ばれる囚人のようにおし黙って、うつろな目を向けていた。時には貨車の中から、火のついたように泣き叫ぶ赤ん坊の声が聞こえた。一切の財産を奪われ、希望を失い、現地人の強奪におののき、あさましさをむき出しにした人たちの貨車と、無力の兵となった私たちの貨車が、行方もわからずに、すれ違っていった。

『シベリヤ画集』(新潮社、1971年)

香月泰男【かづき やすお】
生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)
山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学び、美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表しました。1967年、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。その作品は今日も多くの人々を惹きつけています。

寸法 73.0×117.3cm
形状 額装