山口県立美術館 YAMAGUCHI PREFECTURE ART MUSEUM

はこぶひと 運ぶ人

香月 泰男 かづき やすお

1960(昭和35年)

油彩/カンヴァス

〈画家のことば〉
ブラゴベシチェンスクにおける抑留生活の第一歩は、三日間の荷役作業で始まった。船着場から引込線の貨車まで6キロ、コーリャンをつめた麻袋や豆かすをかついで、暗いみぞれの降る道を歩いた。空腹の身にはひどくこたえた。凍りついた路面に足でもとられたら、たちまちひっくりかえって、再び起きあがれないかも知れぬ。だから、そろりそろりと、二時間も三時間もかかって慎重に歩いた。たとえ戦友が倒れても、助け起すどころではない、我が身を守るのが精いっぱいであった。
つきつめてゆけば、人間が麻袋を運んでいるのではなく、麻袋が人間に運ばせているという感じた。運ぶ人間はもはや人間ではなく、運搬機械と化した奴隷だった。
『シベリヤ画集』(新潮社、1971年)

香月泰男【かづき やすお】
生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)
山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学び、美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表しました。1967年、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。その作品は今日も多くの人々を惹きつけています。

寸法 72.3×116.9cm
形状 額装