山口県立美術館 YAMAGUCHI PREFECTURE ART MUSEUM

ばつ

香月 泰男 かづき やすお

1964(昭和39年)

油彩/カンヴァス

〈画家のことば〉
火力発電所で使う薪をつくるため、森林の伐採作業に従事した。8人ぐらいが組みになって、木を伐り倒す者、それを1メートルほどの長さに輪切りにする者、輪切りになったものを薪にこなす者の三つの分担に別れた。
巨木が雪煙りをあげて倒れると、目の前に大きな切口があらわれた。松の赤い樹皮と、見事な同心円を持つ年輪の肌は、たとえようもなく美しかった。あたり一面の雪の中で、それは能舞台のようなすがすがしさで、はげしい疲労を一瞬忘れさせてくれた。
人の背丈ほどもある、二人曳きの鋸も美しかった。木の切口の持つ自然美と対照的に、人工美の極致を示していると思った。私は鋸の大きさを、なんとかそのまま画にしてみようと思った。その結果、画面からはみ出そうとするのを、無理に押しこんだ形になった。

『シベリヤ画集』(新潮社、1971年)

香月泰男【かづき やすお】
生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)
山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学び、美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表しました。1967年、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。その作品は今日も多くの人々を惹きつけています。

寸法 73.0×116.1cm
形状 額装