山口県立美術館 YAMAGUCHI PREFECTURE ART MUSEUM

とうが(えにせい) 凍河〈エニセイ〉

香月 泰男 かづき やすお

1966(昭和41年)

油彩/カンヴァス

〈画家のことば〉
収容所からずっと東にゆくとエニセイ河に出る。河岸にある大きな製材工場で作業をした。冬は近くの山から吹きおろす寒風で、火気厳禁の工場の中は、冷蔵庫にいるようだった。エニセイ河は、この辺ではまだ大河の相貌を呈していない。夏の間、流れを利用して木材の集積をする河も、冬が来ると氷が流れ出し、岸からも凍りはじめて川幅が狭くなってゆく。そして、ある日突然水の流れがなくなってしまう。目の前を鈍く光って、大きく蛇行する凍河を見ていると、時間が停止したかのように思えた。戦争、争い、憎しみ、苦悩などという人間の営みは、大自然の営みの前では、いかにも卑小に見えてならなかった。

『シベリヤ画集』(新潮社、1971年)

香月泰男【かづき やすお】
生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)
山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学び、美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表しました。1967年、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。その作品は今日も多くの人々を惹きつけています。

寸法 72.7×117.0cm
形状 額装