山口県立美術館 YAMAGUCHI PREFECTURE ART MUSEUM

ダモイ

香月 泰男 かづき やすお

1959(昭和34年)

油彩/カンヴァス

〈画家のことば〉
スコラーダモイ(帰国は近いぞ)。この言葉を何度聞かされたことだろう。その度に私たちは飛び上がって喜んだ。しかし、いつまで待ってもダモイは来ず、ぬか喜びに終ることばかりだった。しまいには、ロシヤ人のスコラー(もうすぐ)を信用しなくなった。そのうちにも、少しずつ、確実に、ダモイの気配が感じられるようになって来た。そしてある日、突然ダモイの通知が届いた。収容所の中は喜びのかん声がどよめいた。
翌日、厳重な所持品検査があった。私達は下着だけになって毛布にくるまり、所持品を前にならべ、フェルトの長靴をぬいで脇に置いて、おとなしく検査官の来るのを待った。その間にも、喜びと不安の入り交じった、複雑な気持がおそってくるのだった。

『シベリヤ画集』(新潮社、1971年)

香月泰男【かづき やすお】
生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)
山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学び、美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表しました。1967年、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。その作品は今日も多くの人々を惹きつけています。

寸法 72.9×116.8cm
形状 額装