山口県立美術館 YAMAGUCHI PREFECTURE ART MUSEUM

ナホトカ

香月 泰男 かづき やすお

1961(昭和36年)

油彩/カンヴァス

〈画家のことば〉
列車に乗り込むまで不安だった。乗れば乗るで、走るまでがまた不安。走りだすと、止りはしないか、止れば、ここで降ろされるのではないか。二年近くも待ちこがれていたものが、予告もなしに、ふいに与えられたのだから、何となく不安で、何かにつけて胸が騒いだ。
チョイナゴルスクを出発して15日目、日本海の群青が目にしみるナホトカに着いた。船の便が悪く、ここの収容所で三週間近くも過した。宿舎は旧海軍のテントで狭いところへぎっしり詰まって寝た。頭と足を入れ違いに、横向きで寝る苦しさに耐えかねて、テントの外へのがれて溝の中で寝たこともあった。

『シベリヤ画集』(新潮社、1971年)

香月泰男【かづき やすお】
生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)
山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学び、美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表しました。1967年、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。その作品は今日も多くの人々を惹きつけています。

寸法 116.1×72.6cm
形状 額装